実家の味を再現しようとして、九州の醤油が甘いことを知った
18歳まで過ごした実家では、料理にアゴ出汁が使われることが多かった(味噌汁は煮干しを使うこともあったが)。一人暮らしを始めてから、住んでいた地方で、地元で有名な出汁を勧められて使ってみた。香りというか甘みというか、美味しくはあるのに、どこか違和感があった。
レシピ通りに作ると、甘くなる
自炊するようになって、実家の料理と比べて、自分の作る料理が甘めに仕上がることに気づいた。特に、醤油を多く使う煮物類で目立った。レシピ通りの分量で作っているはずなのに、味が違う。
調味料を見比べてみると、実家では濃口醤油を使っていたが、住んでいた地方の店では「うま口」と書かれた醤油が中心で、濃口が見つからなかった。味噌は、実家も住んでいた地方も合わせ味噌だったと思う。分量の問題ではなく、使っている醤油そのものが違っていたわけだ。
醤油と味噌の地域差
気になって調べてみたところ、「九州のしょうゆは甘い」ことは、食文化についての文章でも、周知のこととして書かれていた。ただし、その文章には、甘くなる理由までは書かれていなかった。また、私が見た「うま口」が、資料の分類のどれに当たるかも、確認できなかった。
農林水産省の資料から、醤油と味噌の地域差の目安を表にまとめた。
| 種類 | 主な地域・特徴 |
|---|---|
| 濃口醤油 | 全国でつくられ、東日本を中心に普及。生産量の8割以上 |
| 淡口醤油 | 関西地方で発達 |
| 溜醤油 | 東海地方(愛知・岐阜・三重)で使われる |
| 再仕込み醤油 | 山口県や九州の一部でつくられる。生産量は少なめ |
| 米味噌(甘口・淡色) | 静岡、九州など |
| 麦味噌 | 甘口は九州、中国地方の日本海沿岸。辛口は九州、四国、関東北部 |
| 豆味噌 | 愛知・三重・岐阜の中京地方に限られる |
※農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」を、私が要約した。表は目安で、同じ地方でも店や家庭で違う。
赤味噌の味噌汁で、味噌の地域差を意識した
外食で飲んだ赤味噌の味噌汁が美味しく感じて、味噌にも地域差があることを意識するようになった。資料によると、豆味噌は愛知・三重・岐阜の中京地方に限られるという。そのとき飲んだ味噌汁が豆味噌だったかどうかは、確認していない。
自分でも赤味噌を使ってみたが、味噌汁以外の料理ではしっくりこなかったので、それ以降は使っていない。
砂糖とみりんを、小さじ1〜2減らして調整した
醤油が甘いなら、甘さを足す調味料を減らせばいい、と考えて、砂糖やみりんを小さじ1〜2ほど少なく入れるようにした。たとえば、照り焼きチキンで、醤油大さじ4、砂糖大さじ2と書いてあるレシピなら、砂糖を大さじ1.5にするなど、だ。
| 調整するもの | 私のやり方 | 例 |
|---|---|---|
| 砂糖・みりん | 小さじ1〜2ほど少なくする | 照り焼きチキン:醤油大さじ4、砂糖大さじ2 → 砂糖を大さじ1.5にするなど |
| 醤油 | レシピの量のまま | — |
※あくまで私の経験からの目安。醤油や料理によって変わるので、味を見ながら調整する。
調味料の分量を調整するときの考え方は、買い物や分量計算について書いた別の記事にも書いている。
家庭の味は、母に聞いてメモするしかない
「家庭の味」を再現する一番確実な方法は、結局のところ素直に母に作り方を聞くことだった。教えてもらった内容をまずメモし、2回目以降に作った時の気づきを自分なりに追記していく、という形で少しずつ精度を上げている。目分量で伝えられることの多い家庭の味こそ、記録して初めて再現できるようになる。この「分量や調整を記録として残したい」という欲求が、そのままアプリを作る動機の一つにもなっている。
レシピは「土台」でしかない
こうした経験から、今はレシピの分量を絶対的な正解として扱わないようにしている。同じ「醤油大さじ1」でも、使っている醤油の種類によって、甘さもコクも違う。レシピは土台で、実際の調味料に合わせて微調整するものだと考えるようになってから、味の再現に対する構え方がだいぶ楽になった。
参考にした情報
- 農林水産省:醤油、味噌、その他調味料|にっぽん伝統食図鑑(ページに掲載日・更新日の記載はなし。醤油・味噌の種類と主な地域)
- 江原絢子「しょうゆの地域性と形成要因の調査に関連して」『FOOD CULTURE』(キッコーマン国際食文化研究センター):PDF(pp.26–27)(PDFに号数・発行年の記載を確認できなかった。「九州のしょうゆは甘く」と書かれている)
※上の2つは、2026年10月11日に確認した。